コトラーの戦略論-4つの経営戦略論

前回は「経営戦略論」で経営判断に必要なナレッジベースについて取り上げました。
そこで今回はそのナレッジベースの1つである「経営判断の基礎知識」の中からコトラーの経営戦略論を取り上げます。

コトラーによれば経営戦略はその企業の市場の地位によって決まるとしました。
市場の地位とは「市場リーダー」「市場チャレンジャー」「市場フォロアー」「市場ニッチャー」です。

■「市場リーダー」:
業界、市場・商圏No1の地位を占める最大のマーケットシェア をもつ企業です。
市場における経営資源の量と質で独自の優位性(=強み)を持っている企業です。
経営戦略としては、マーケット最大化の維持を図るために、企業の強みを全方面に展開する「全方位対応型のフルカバレッジ戦略」や「シェア維持・拡大と市場支配力の 強化」の戦略を採っていきます。
ちなみに、自動車業界でいえば、「トヨタ」がこの地位にあります。日本はもとより、欧米を筆頭に市場の拡大戦略と強みであるクラウン、セルシオといった中型高級車で地域のフルカバレッジ戦略と採っているように見えます。

■「市場チャレンジャー」:
業界、市場・商圏で2位から4位の地位を占め、常にトップを目指してリーダーにチャレンジしている企業です。リーダーに順ずる経営資源を有しています。
経営戦略としては、競争地位の向上が最大の目標になります。リ-ダーと1対1で対応するには資源が劣りますので、製品や市場対応で差別化を図る「リーダー対応型差別化戦略」やシェア拡大のための「下位企業市場の争奪戦略」などの戦略を採ります。

自動車業界で言えば、「ホンダ」「日産」がこの地位に当たると思われます。ホンダ は中小型の技術を活かして若者向けの車種「Fits」等を開発し、市場でも真っ先に米国へ進出し、米国の若者人気No1の自動車メーカーにしました。

日産はゴーンさんがCFT(Cross Functional Team)により、業務プロセス改革を行い、コスト構造を変えたことは有名です。 また、全機種を日産独自のスタイルへモデルチェンジし、需要を喚起しましたし、米国においては日本メーカー最初の大型トラック工場をミシシッピー州キャントンに作り差別化を計っています。
この2社ともにトヨタよりはより経営資源を集中し、差別化によるリーダー対抗策をとっています。

■「市場フォロアー」:
業界、市場・商圏でチャレンジャーの下位にあり、経営資源も劣っており、リーダーやチャレンジャーの保守的追従者になっている企業です。
経営戦略としては、リーダー、チャレンジャーとの対決を避け自社独自の優位性を確保する戦略が採られます。研究開発や市場開拓を最小にするための「上位企業模倣作戦」、「コスト低減、利益最大」の戦略が中心になります。経営体力が付いた時点で「チャレンジャー戦略」へと移行することになります。

■「市場ニッチャー」:
特定分野、特定市場を選択し、上位企業との競争を避け、特定分野、特定市場でリーダーとなる戦略です。 経営資源は市場リーダーを狙う位置に無いため、経営戦略は特定マーケットシェア最大化・維持が焦点となります。
自動車業界でいえば、「スズキ」自動車等がこの位置にあると思われます。 2002年度は2兆円の売上、約4%の利益率を上げ、小型自動車の国内販売台数はメーカーで最大でした。小型車分野に特化し、商店や女性市場に特化したマーケット戦略が採られているように見えます。中大型の自動車市場とはまったく違ったニッチと言えるドメインで牙城を築いているように見えます。

第11回はここで終了します。コトラー経営戦略論は市場地位での経営戦略策定のための基礎知識の1つです。 次の第12回では市場の占有率すなわちマーケットシェアによる戦略論のテーマとして「経営戦略論―ランチェスターの戦略」を取り上げます。