ランチェスターの戦略1-4つの経営戦略論

前回は「経営戦略論-コトラーの戦略」で、経営観のための「経営判断の基礎知識」のひとつをご紹介しました。 そこで今回は経営観のための「経営判断の基礎知識」の第2段としてランチェスターの経営戦略論を取り上げます。

ランチェスター戦略はランチェスター協会の田岡信夫氏(故人)によりマーケティング戦略として開発されました。もともとは、イギリスの技術者F.W.ランチェスターが第2次世界大戦時の空中戦研究から生まれたものです。田岡氏はこの研究をマーケティングに転用して理論化しました。理論の基本は「マーケットシェア(市場占有率」です。
ランチェスター戦略では“マーケットシェアはマーケットシェアが10%上がると利益率が5%アップする“と言います。

その背景は、マーケットシェアが上がると市場の認知度(またはブランド力)が上がりますので、販売努力がより少ない力で売上向上が見込めます。したがって、販売経費が少なくて済むようになります。
また、生産工程においても多く生産するようになると、習熟度が上がりますし、材料の購入ロットもまとめが可能になり、労務費、材料費の低減が図れて、製造コストが減少することになります。売上が上がって、コストが低減しますので利益が上がり、利益率も向上することになります。
すなわち、マーケットシェアを高めれば企業の収益は向上することになりますが、“100%までマーケットシェアを高めなければならないのか”という疑問が残ります。

ランチェスター戦略ではその疑問を実態分析からそのシェアに目標値を設定し、マーケットシェアと市場地位の関係を整理しました。

この戦略ではマーケットシェアの地位をマーケットシェア目標値から3段階、「上限目標」「相対的安定」「下限目標」で設定しています。
(1)上限目標値:マーケット市場の73.88%を占有する状態で、「独占状態」といわれます。 独占とは市場から商品や価格を選択できにくい状態を言います。したがって、独占状態の企業は良さそうに見えますが、この目標値以上の独占状態は逆に市場の反発を招くことも想定されます。マーケットシェアにも占有すべき上限があると言っているわけです。マーケットシェアもある程度の競合状態を残すことが必要です。

(2)相対的安定:マーケット市場の41.7%を占有する状態です。マーケットシェア1位のための当面の目標となります。2位以下の企業が連合すれば、シェア1位を獲得し1位の企業と逆転できる状態です。自動車業界における2002年の国内販売台数シェアはトヨタ42.2%、日産18.5%、ホンダ15.2%、その他24.1%(2003/7/26東洋経済)です。トヨタの位置づけがこの状態にあります。

(3)下限目標:マーケット市場の26.12%を占有する状態です。シェア1位を目指す初期目標となります。シェアトップほどではないが、ブランドはかなり浸透しシェア拡大の礎ができた状態です。シェア争いは決定していません。コピー業界におけるキャノン、リコー、富士ゼロックスが各社30%から20%の状態で各社ともにこの状態にあります。

第12回はここで終了します。ランチェスターの経営戦略論の第1回ではマーケットシェアと市場地位の観点に焦点を当てました。 次の第13回では市場の占有率すなわちマーケットシェアを向上するための方策「経営戦略論―ランチェスターの戦略2」を取り上げます。