前回はPERT/CPMの記述ルールを解説しました。今回は、“クリティカル
パスの求め方と改善”を採り上げます。
前回のPERT/CPMの記述ルールで述べましたように、プロジェクトの作業は前工程の
作業の成果物を参照して、新たな成果物を作成するという作業に前後が出来てきま
す。その引継ぎの前作業の終了であり、次作業の開始である節目を“イベント”と
称しました。
さて、最もプロジェクト納期を最長にする作業経路であるクリティカルパスを求めて
みましょう。
例題は、前回の作業ネットワークを使用します。
(問題)アクティビティとして、A,B,C,D,E,F,G,Hの作業がありま
す。それぞれのアクティビティは計算を簡単にするために、全て1人で作業する
仮定しましょう。
・最初の作業はイベント1からA,Bが並行作業で始まります。
・D作業はA作業の成果物をもってイベント2から開始できます。
・C,H作業はB作業の成果物をもってイベント3から開始できます。
・作業E,FはC作業の完了をもってイベント4から開始できます。
・作業Gは作業DとEが完了して、初めてイベント5を開始できます。
・プロジェクトの完了であるイベント6は作業G、F、Hの成果物を持って完了 となります。
さらに、それぞれの作業の工数はA=4.33人日、B=6.17人日、
C=9.67人日、D=2.50人日、E=6.00人日、F=8.50人日、
G=10.33人日、H=5.33人日です。
“さて、納期までに何日掛かるでしょうか?”
(1)クリティカルパスを求める
納期日のイベント6までのイベント1からの経路と作業期間を全て挙げてみましょ
う。
a.イベント1→イベント2→イベント5→イベント6を経路とする作業A、D、
Gで、作業期間は17.16日
b.イベント1→イベント3→イベント4→イベント5→イベント6を経路とする
作業B、C、E、Gで、作業期間は32.17日
c.イベント1→イベント3→イベント4→イベント6を経路とする作業B、C、
Fで、作業期間は24.34日
d.イベント1→イベント3→イベント6を経路とする作業B、Hで、作業期間は
11.50日
以上の4通りになります。納期が最長になるのはbの32.17日の経路ですから、
このイベント1→イベント3→イベント4→イベント5→イベント6の経路が“クリ
ティカルパス”です。
納期を改善するにはこのクリティカルパスの作業を改善しないと納期は短縮できませ
ん。
さて、改善するにはクリティカルパスの作業にそうでない経路の作業工数を配分
し直して、クリティカルパスの作業の期間を短縮することです。その工数配分できる
余裕作業を見つけることが必要になります。
そのためには、イベント6納期期日から逆算してイベント毎に“最早完了日(TE:
Terminate Early) ”と“最遅着手日(TL:Terminate Last)”を計算することで
該当作業を見つけることが出来ます。
(2)“最早完了日”と“最遅着手日”を見つける
最早完了日とはイベント1から6まで納期日を積み上げたイベントの納期日です。
たとえば、イベント4はイベント1、3を経由する作業B(作業期間:6.17
日)と作業C(作業期間:9.67日)がありますので、最早完了日(=TE)は
15.84日となります。
最遅着手日(TL)を求めてみましょう。クリティカルパスでの最長納期32.17
日が基準になります。
イベント4を逆算してみましょう。bのクリティカルパスではイベント6の
32.17日から作業G(作業期間:10.33日)と作業E(作業期間
:6.00日)を差し引きますので、15.84日になります。
これを最遅着手日(=TL)といいます。クリティカルパスではTEとTLは同じ
になります。
Cの経路を同様に逆算しますと、TLは23.67日となります。クリティカル
パスのTL=15.84日と比較しますと7.83日の差が出ます。これをスラ
ック(=余裕)といいます。
Cの経路の作業Fは最も早く開始できるのは15.84日目に出来ますし、遅くても
23.67日目に開始すれば納期32.17に間に合うことを意味しています。
このことは、Fの作業工数をイベント4以前の作業に移行しますと、納期が短縮で
きることを意味しています。
第71回はここで終了します。“クリティカル パスの求め方と改善”を取り上げま
した。
次回は、プロジェクト予算計画、予算と納期管理を同時に実施する手法である「EV
MS」を取り上げます。