事業施策、管理指標も定義できましたが、事業企画書(または経営戦略企画書)
には投資効果による分析が必要です。今日は、投資効果の考え方を議論していま
す。
中川氏:投資対効果と言うのは、“使った分に対してどれだけ儲けたか”と言う
ことですよね。だから、1億円の設備を買って、1億円以上の利益を上げ
れば投資対効果は良好と言うことになりますよね。
山田氏:何か基本的なことが分かってないのでは?
中川氏:えっ!! 何が・・・・・・
上野氏:中川さんの言ったことはB/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)
がごちゃごちゃ。
中川氏:どういうこと?
上野氏:だって、1億円の設備を買うことは費用じゃなくて、現金が設備という
資産に変わっただけで、P/Lにはまったく関係が無いので利益は減ら
ないのですよ。
投資対効果を見る場合はキャッシュの出入りか収益の増減で判断しない
と統一が取れないですよ。
中川氏:さっぱり分からない。
山田氏:設備を買うのに1億円という現金を使ったということは測定指標を同じに
すると1億円以上の現金が入ってきて投資対効果が高いというべきでしょ
う。これは現金、すなわちキャッシュによる投資対効果測定法なの
です。
中川氏:なるほど。
上野氏:収益で見る場合は、購入した設備が減価償却される費用分を何年の利益
向上で吸収できるかを見れば同一指標になるわけです。
中川氏:減価償却って何よ?
上野氏:メルマガの基礎編であったでしょう。1億円の設備を買っても、年月が
経つと価値が下がるので、その分の価値を減額することを税法上認めら
れている費用です。
中川氏:思い出した! パソコンを10万円で買って、1年たつと8万円でしか買っ
てくれない価値とすると、2万円が減価償却費と言うことね。
山田氏:その通り。日本では取得価格の10%が残存簿価なので、1億円だと
1千万円が残存簿価。すなわち、9千万円が減価償却費と言う費用の対象
になるのだ。
収益の観点でみるとこの減価償却費をどれだけ早く利益で回収できるか
と言う観点に立てば同一指標として測定できるわけだ。P/Lの視点
だな。
中川氏:2つも、3つも測定法が無くても良いですよ。どっちを使えば良いのか
な?
上野氏:どっちも必要ですよ。利益と言うのはいずれ現金として回収できるもの
ですが、変化の激しい現在のような環境では投資の判定はキャッシュ
中心の判断でしょうが、事業の収支は収益判断になっていますよね。
山田氏:そうだな。投資はキャッシュの出入りのキャッシュフロー。ただ経営は
収益で見るから利益と言うことだから、事業判断は収益での判断となる
な。
第101回はここで終了します。
今回は「事業計画の作成 投資対効果」として投資効果の考え方の論議でした。
次回は、事業の投資対効果を損益判断で捉える「投資対効果 損益分岐点分析」
を取り上げます。