最初に、電子政府の業務システムの構築と維持の構造から、EAの考え方を捉えてみま
しょう。
この電子政府プロジェクトが発足するとき、業務を最適化して効率的に稼動させる
ことが目的の1つにありましたが、それ以上に業務システム開発とその運用維持を最短
に最小費用で達成することを目的としてあげられていました。
今までは経産省、総理府等18ある各府省の情報システムは個別に構築されていま
した。また、業務の設計はITメーカー任せで専門家がいない状態でしたから、開発・
運用改善などはメーカーの言いなりの提案価格で実施せざるを得ない状態だったし、
予算が無ければIT化は停滞するしかありませんでした。この状態を解消して効率的
な業務システムを策定するためには、政府自身で業務要件書を作成しITメーカーにRFP
の提出を求め、システムを構築するスキルが必要になります。皆さん方も販売システ
ム構築を手がけるときに、同じ業態であれば以前構築したシステムの流用やパッケー
ジを考えるでしょう。この考え方をそのまま流用することで電子政府システム構築を
効率的にしようと考えました。言うは易くですが、そのためには誰でも理解できる
標準的な設計コンセプト/設計プロセス/設計手法/記述様式/記述手法/コンポネント
(開発部品)等の標準モデルが必要です。また、ITの専門家がいませんのでその構築
支援を指導してくれる人材の採用が必要となります。この人材が各府省に民間企業
から採用されたCIO補佐官です。
日本の電子政府システム構築の標準モデルとなったのはザックマンモデルを具現化
し、設計モデルとしていた米国連邦政府のFEA(Federal Enterprise
Architecture)モデルです。
米国連邦政府のFEAの基本的プロセスは踏襲しましたが、設計プロセスや手法等は日本
の特性に合わせて改善を加え、ITアソシエイト協議会中間報告で「エンタープライズ
アーキテクチャ」注1(2002年12月)発表され、2003年12月に設計ガイドとしての
「EA策定ガイドライン」注2が策定され、2005年2月2日に「業務・システム最適化
計画策定指針」(ガイドライン)注3の最新版が公開されました。
参照URL:(注1) http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i21227mj.pdf
(注2) http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ea/data/report/index2.html
(注3) http://www.e-gov.go.jp/doc/20050202doc.pdf
電子政府システムの構築手順は既存の府省システムをEAフレームで設計し、この府省
モデルを参照モデルとし、新府省業務に適用して構築のスピード化、標準化を図る
ことになりました。そのために、政府の業務を分析注4され18府省で共通システム化
できそうな21個の共通業務システムと各府省で独自に構築しなければならない51個の
個別業務システムがあることが分かりました。参照モデル作りとして、共通業務シス
テムから「物品調達業務」、「人事給与業務」、「共済業務」等の数個の業務を最初
のプロジェクトとして、2003年に発足しました。
参照URL:(注4) http://www.e-gov.go.jp/doc/sentei.html
第113回はここで終了します。
今回は「電子政府システム構築・維持スキーム」として、電子政府の構築背景と考え
方を紹介しました。
次回は「EA出現の背景」をとりあげます。